楽器測定 報告

楽器測定 報告


プロジェクト”響鳴する風景/サウンドドローイング”のワークショップにおいて楽器として使用される創作楽器、”音叉型平面波楽器(仮名)”の音響特性の野外測定を東京藝術大学が茨城県取手市にもつの東京藝術大学取手キャンパスの広大な敷地を使い行った。

1. 計測条件、方法
場所:東京藝術大学 取手キャンパス内の直線道路、運動場、録音スタジオ
日時:2019年1月25日、11時~18時
気象条件:天候は晴れ、気温(10°程度)、風力(0-2m程度)は測定中に大きな変化はなかった
使用楽器:”音叉型平面波楽器(仮名)”のセットより、2の音(共鳴体)、低音の代表としてG3(sol, ca. 1567Hz.),高音の代表としてG4(sol, ca. 784Hz.)を選び、,木製のハンマーで打鍵し計測した。
測定機材:音圧計 8台(サンコー 小型デジタル騒音計 RAMA11O08), 風圧計 (URCERI MT-915, 温度計内蔵),デジタル分度器 (シンワ測定 デジタルプロトラクター 62495), デジタル距離計 (suaoki社 測定可能距離:4m~600m B06XQGL4FH)
録音機材:野外用レコーダー、マイク各種, 音楽スタジオ内のシステム
撮影:写真撮影、映像撮影
連絡:トランシーバー(10台)
スタッフ:ディレクション(古川聖)、アドバイザー(川崎義博)
アシスタントディレクター(牛島大悟)、録音(2名)、写真撮影(1名)、映像撮影(1名)、測定者(6名)、データ管理(一名)


2. 計測目的
”音叉型平面波楽器(仮名)”の
1)遠達性(音波の到達距離、およびに弁別可能距離)の測定
2)指向性の測定、この楽器の音波は顕著な直進性を持つが、角度ごとの測定しこの楽器の空間内での広がりの様相を把握する
3)楽器の音色の音響スペクトルの解析と特徴抽出

3. 測定方法と解析結果
1)遠達性の測定(測定1)

遠達性の測定のにはキャンパス内を貫通する直線道路(直線部分は250メートル程度)が使用された。道路はアスファルト舗装がされており、一定程度の音の反射は起きるものと推定され、計測はこの条件もと行われた。


測定の方針:
楽器の発音場所を起点として一定の距離ごとに測定者を置いて音圧(dbs)を計測した。


楽器は木製のハンマーで一人の演奏者により叩かれたが、楽器に打器場所には音量がマックスになるスイートスポットがあり、容易にその場所が見つかるので、その場所に印をつけ常にその場所を(演奏者の主観で)最大の音量がでるように叩いた。

測定1の結果:

以下の表が測定結果である。
楽器1(小)は最初の25メートルで大きく減衰したのち、その後はゆるやかに減衰し225m付近で環境音と同レベルに音圧になるが、人間の耳には聴き取れる。楽器2(大)も最初の25メートルで大きく減衰したのちゆるやかに減衰するが、100メートル付近では楽器1(小)より減衰の割合がおおく、200m付近で環境音と同レベルに音圧になる.量楽器とも野外において100メートルをすぎても高い音圧が保持されていることがわかる。

20190125平面波楽器測定データ_1 PDFファイル

 

音圧のレベルと音の弁別可能性に関する気づき:


測定において、楽器音の音圧を測定し、その値を計測して音の遠達性としたのだが、音源から200メートル以上離れると楽器の音の音圧は測定場所の環境音のレベルと同等かそれ以下になる。つまり、楽器音は音圧計では測定不能となる。しかし、発音体からの音は依然として人間に聴覚にはきこえることに気づいた。

騒音の中で人間の聴覚と脳は「カクテルパーティー効果」として知られる選択的聴取を行うことは知られているが、騒音とは対極にある静寂のなかにおいても選択的聴取が行われていることになる。
人間にとって音が聴こえるということは音の振幅の問題であると同時に音色の差異を聴き出そうとする意図の問題であることに改めて気付かされた。(楽器の演奏の様子、打鍵の動作などは200メートルを超えた距離においてははっきりと視覚では確認できない。)

このことは今後のの楽器製作にも生かしたい。(バイオリンなどでは音の強さを表現するために、弓を駒の近くにあて音色の変化を加えることを思い出した)

音の聴取にはまず音量、そして音色の特徴、聴取側の意図、そしておそらくは音の選択的聴取には視覚的要因も重要な要因となっていると推測される。

2)指向性の測定(測定2)


遠達性の測定の後にキャンパス内の現在は使われていない、100メートル x 60メートル程度のグランドを使って行われた。グランドの北側、西側は森へと続き、東側は別の施設の領域、北側はキャンパス内道路に接し、道路の先は小さな木立、畑地となっている。森は音を吸収し、東側施設の建造物も測定地点からは十分離れているのでは建造物による音の反射も大きな影響はないと判断した。


測定の方針:
楽器の発音場所を起点として1/4円環状(扇状)に角度(45°)、距離(10m)ごとにマーカー(合計18箇所)を起き、順次そこに測定者を置いて音圧(dbs)を計測した。計測した距離は1m,10m,20m,30,40,50mで角度は90度(発音場所の直右)、90+45=135度(発音場所の右前方)、90+45+45=180度 (発音場所の真向かい)の3方向。 楽器の形状(左右対称)からして発音場所の左前方、発音場所の直左の計測は行わなかった。それは楽器の音波の伝波は右前方=左前方、直右=直左と考えられるからだ。

 

指向性の計測にはグランド(現在未使用で未整備)を使用しにマーカーを打ち込み、そこを測定ポイントとする。

楽器、2種類が木製のハンマーで打鍵される。

まずは至近距離(1m)の同心円の測定からはじめる。

マーカーの位置に測定者を配置

マーカーにそって測定者は順次、角度ごとに移動し数値を測定


測定2の結果:


以下の表が測定結果である。直右(90°)、右前方(135°),真前方(180°)において距離が離れるに従って音圧が減することは測定1と同様であるが、計測値からは直右(90°)、右前方(135°)の間に有意な差がないことがわかる。
私たちは楽器の制作にあたり音圧は真前方(180°)において最大になり、角度が右前方、直右にむけて徐々に音圧が下がるものとイメージし、その前提でワークショップ等を行ってきたが、実際は音の広がりの音圧の強さにおいて、前方、少なくとも135°から225°までは音圧に差はなく、135°~90°,225°~270°のどこかから大きく下降すると推測される。どの角度から大きく下降するのかを確かめるために補足再実験が必要であることを認識した。

20190125平面波楽器測定データ_2PDFファイル

 

3)楽器の音色の音響スペクトルの解析と特徴抽出(準備中)

 

4.まとめ

記録写真:

計測に使われた大学構内の道路

等間隔にマーカーをつける

一定の距離ごとに測定者を配置

起点における打鍵
起点における打鍵各、測定ポイントに配置された測定者は音圧計の数値をかきとる。
音圧の測定と同時に音自体の録音も行う。
遠距離の測定のためにはデジタル距離計を使用

 


測定ポイントで同時に音の録音も行う