タイトル:
étranger / エトランジェ
作者:川崎義博
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場所:上野
解説:衛星放送のプロデューサーだった頃、番組の音の収録の為、国内外をロケしていた。カリブの海にいたと思えば、知床の流氷の音を収録に行き。フランスのマルシェに居れば、東北の森に、そしてニューヨークの街を歩いていた。そうやって、世界中を周り、音を収録し、都内のスタジオに戻り番組を作る。作業が終わると、またロケに出かけた。その生活が何年か続いた時、スタジオ作業を終え、新宿工事現場の横を歩いている時、突然歩けなくなった。原因はわからない。とにかくどこにいるのか自分自身わからなくなり、一歩も動けなかった。足が動かない。どうしようもなく佇む私の横を次々と人は通り過ぎていく。どれくらい時が経ったであろう、しょうがないので、足の下をイメージした。鉄板があり、そのもっと下に土がある。それを広げて行くと次第に大きな星の一点に自分がいることに気がつく。そう、どこであれ、この星の一点にいる。そう思い描いた時、ようやく一歩が踏み出せた。初めての体験だった。それ以来、足の下の星をいつも意識はしている。しかし、時折、以前訪れた場所の音や幻影が蘇る、それがその時にいる場所に重なる。そうした時、あれ?自分はどこにいるんだろうと、戸惑いを覚えることが多々ある。いつまで、それらの風景や音は私の中に居続けるのだろうか? いや、本当に私はどこにいるのであろうか?この星にいることは確かなのだが。
今回は、そんな自分の体験をもとに、一つの音が作品ではなく、この総体が作品になるように、上野中心に音をマッピングして、少しだけ作品化を試みた。他人が自分の体験を、追体験できる。そうやって,空間と時間のズレの間に居ることに気がつく。片耳を外して、生音と一緒に聞くのも良いかも。さあ、まずは音の散歩を楽しんでみてください。あなたは音に満ちた星にいるのですから。